公用文作成の考え方③

「公用文作成の考え方」の内容が、文章作成全般に妥当する内容を含むので、紹介しようというシリーズです。

公用文作成の考え方

 「公用文作成の要領」が建議されたのが昭和26年のことです。その後、ようやく、時代の変化に併せて改訂すべく、令和3年に「新しい「公用文の作成の要領」に向けて」が報告されました。「公用文の作成の考え方」は、「新しい「公用文の作成の要領」に向けて」の内容を踏まえ、政府内で活用されることを目指し、取りまとめられたものです。

 このように、「公用文の作成の考え方」は、政府内で活用されることを目的としていますが、文章の作成全般に活用できるんじゃないか?と思われる内容を含んでいます。そこで、何回かに分けて、気が向いた時に、内容を紹介していきます。

用語の使い方

 文章の中には、様々な用語が出てきます。そんな用語の使い方です。

法令・公用文に特有の用語

 「公用文作成の考え方」なので、法令や公用文に特有の用語が真っ先に出てきます。これらは、当然、適切に使用する必要があります。ただし、必要に応じて言い換えてOKです。

専門用語

 専門用語は、①段階を踏んで説明し、②意味がよく知られていない語は、内容を明確にし、③日常では別の意味で使われる語は、混同を避けるようにします。

 また、専門用語は、性質や使う場面に応じて、以下のように使います。

①言い換え

 例としては、「頻回→ 頻繁に・何回も」と「埋蔵文化財包蔵地→ 遺跡」が挙げられています。

②説明を付けて使う

 例として、罹災証明書を挙げています。括弧書きで、「支援を受けるために被災の程度を証明する書類」という説明を付けるといった具合です。

③普及を図るべき用語

 特に例は挙げられていません。工夫して、そのまま使えとのことです。

外来語

 基本的に、専門用語と同様の考え方です。

①日本語に十分定着しているもの

 ストレス 、ボランティア、リサイクル等の日本語にするとかえって意味がわからないんじゃない?というものは、そのまま使います。

②日常使う漢語や和語へ言い換え

 以下のような意識高い系か、かえって仕事できない人が使ってそうな言葉は、日本語に言い換えます。

日本語に言い換えるべき言葉の例

①アジェンダ→議題

②インキュベーション→ 起業支援

③インタラクティブ→ 双方向的

④サプライヤー→ 仕入先、供給業者

sir.child

サプライヤーってここに入るんだ…
サプライヤーとかサプライチェーンとか使ってるよね?

③言い換えることが困難なもの

 日本語に言い換えるのが難しいものは、説明を付けて使います。たとえば、「インクルージョン(多様性を受容し互いに作用し合う共生社会を目指す考え)」という感じです。

④日本語として定着する途上のもの

 工夫して使います。例として、「リスクを取る」が挙げられています。

sir.child

「リスクを取る」って、まだ定着してないんだ!?

紛らわしい言葉を用いない

 誤解・混同を避けるため、①同音の言葉、②異字同訓の漢字の使い分けに注意しましょう。

「から」と「より」

 東京から京都まで行く。

 東京より京都の方が暑い。

 会議の開始時間は、午前10時より午後1時からが都合がいい。

程度や時期、期間を表す言葉に注意

 たとえば、「本日から春休みまで」と書くと、終期が「春休みが始まるまで」なのか?「春休みが終わるまで」なのか?が明確ではありません。ここを明確にしましょう。

 また、「いくつか指摘する」→「3点指摘する」とか、「少人数で」→「3人で」や「早めに」→「1週間以内に」等など明確にするといいでしょう。

「等」「など」

 いつさっき使ったので、いきなり指摘された気分です。「等」・「など」は、慎重に使いましょう。具体的に挙げるべき内容を想定し、「等」・「など」の前に、代表的・典型的なものを挙げます。

表現の重複

 「頭痛が痛い」とか「馬から落馬」というやつです。

表現の重複の例

①諸先生方→諸先生、先生方

②各都道府県ごとに→各都道府県で、都道府県ごとに

③第1日目→第1日、1日目

④約20名くらい→ 約20名、20名くらい

回りくどい言い方や不要な繰り返しはしない

回りくどい言い方・不要な繰り返しの例

①利用することができる→利用できる

②調査を実施した→調査した

③教育費の増加と医療費の増加により→教育費と医療費の増加により

sir.child

つい、やってしまってる気が…

文書の目的、媒体に応じた言葉を使う

 誰をターゲットにした文書なのか?を意識して用語を選択します。

 たとえば、「喫緊の課題」を「すぐに対応すべき重要な課題」に言い換える方がいい文書もあるでしょう。

敬語

 解説・広報等における文末は「です・ます」を基本とし、「ございます」は使いません。また、「申します」や「参ります」も読み手に配慮する特別な場合を除いて使いません。

読み手に違和感や不快感を与えない

 文章の基本ですね。偏見や差別につながる表現は避けます。特定の用語を避けるだけでなく読み手がどう感じるかを意識しましょう。そうはいっても、過度に規制を加えたり禁止するのも避けましょう。

その他

 その他の注意点として、以下のような点を挙げています。

聞き取りにくく難しい漢語は言い換える

 例として、橋梁→橋とか、塵埃→ほこり、などを挙げています。

「漢字1字+する」型の動詞は使わない

 「決する」とか「模する」とかは、使わないようにいうことです。まぁ、これは、使わないかな。

重厚さや正確さを高めるには、述部に漢語を使う

 たとえば、決める→決定する、消える→消失するとすると、文章に重厚感が増すよということです。

分かりやすさ・親しみやすさを高めるには、述部に訓読みの動詞を使う

 逆に、文章を柔らかくするには、順調に進む→予定通りに運ぶ、作業が進捗する→作業がはかどるとするといいよということです。

♪Mr.Children「東京」(アルバム:SUPERMARKET FANTASY収録)

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