法律で禁止されてるなんて、知らなかった…この言い訳って通る?

法律に違反し処罰されることを知らなかった場合、処罰を免れることができるのでしょうか?

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犯罪の成立要件

 刑法で規定されている犯罪が成立するには、以下の要件を満たす必要があります。

犯罪の成立要件

①客観的構成要件要素の存在→構成要件該当行為、構成要件的結果、因果関係

②主観的構成要件要素の存在→構成要件的故意

③違法性阻却事由の不存在→正当防衛、緊急避難

④責任阻却事由の不存在→責任能力、責任故意

 なんだか聞き馴染みのない言葉が並んでますが、読み飛ばしてもらってOKです。詳しくは、刑法の基本書を読んでみてください。

故意とは?

 刑法に規定されている犯罪は、基本的に、故意犯です。暴行罪、傷害罪、窃盗罪、詐欺罪等は、全て故意犯です。

 故意をものすごく簡単に言うと、「わざと」ということです。刑法では、故意を①構成要件的故意と②責任故意の二段階で検証します。

 この話も、そうなんだーくらいで読み飛ばしてもらってOKです。

法律に違反するって知らなかった

 ある罪を犯した犯人が、「法律に違反するなんて知らなかった」と取調べや裁判で主張した場合、聞き入れてもらえるのでしょうか?

 この問題は、責任故意の話しです。刑法総論では、違法性の意識と違法性の錯誤の問題として扱います。

違法性の意識

 違法性の意識を簡単に説明すると、ある行為が悪いことで、法律で許されないという意識です。たとえば、人を殺害する人は、刑法199条の規定は知らなくても、自分の行為は、悪いことで法律上許されないという意識を持っているはずです。つまり、自らが犯す犯罪事実を認識・認容(構成要件的故意)すれば、違法性の意識を持ってるのが通常です。

 したがって、違法性の意識、つまり、責任故意が問題になることは、ほとんどありません。

違法性の錯誤

 違法性の意識が問題になるのが、違法性の錯誤があったときです。犯罪事実の認識があったにもかかわらず、その違法性の評価を誤ることを違法性の錯誤といいます。

 ちなみに、処罰の根拠となる具体的な法律の規定を知らなくても、「その行為は悪いことだ」とか「その行為は許されない行為だ」という認識があれば、違法性の意識はあります。たとえば、刑法235条の窃盗罪の規定自体は知らなくても、人も物を盗むのは悪いことだという認識はあるので、違法性の意識はあります。

法律の不知

 やっと本題に入ります。行為が禁止されている法律の存在を知らなかったので、その行為が許されると誤信した場合を法律の不知による違法性の錯誤といいます。

 「法の不知は恕さず」とか「法の不知はこれを許さず」というのが、ローマ法以来の法格言です。ということで、刑法38条3項があります。

(故意)
第三十八条 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
2 重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。
3 法律を知らなかったとしても、そのことによって、罪を犯す意思がなかったとすることはできない。ただし、情状により、その刑を減軽することができる。

 法律を知らなかったとしても、故意がないことにはならないという規定です。ということで、「法律で禁止される行為だって、知らなかった」という言い訳は、通りません。ただし、情状によっては、刑が減刑される可能性があります。

 なお、具体的な法律の規定を知らなくても、自分の行為が許されない行為だと認識している場合は、違法性の意識があるので、刑法38条3項の適用はありません。

厳格故意説?制限故意説

 違法性の意識、違法性の意識の錯誤の問題は、ここから、違法性の意識は犯罪の成立要件なのか?という議論になります。で、厳格故意説とか制限故意説の話しになるのですが、専門的になりすぎるので、ここで終わります。

 気になった人は、刑法総論の基本書を読んでみてください。

♪Mr.Children「優しい歌」(アルバム:IT’S A WONDERFUL WORLD収録)

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